研究概要 |
本研究は,従来ほとんど願みられてこなかった明治以降から第二次世界大戦前までの地域人口変動について,人口動態と人口移動の相互関連性およびそれらと都市化や社会経済的変動との関連性を踏まえて解明を試み,いくつかの結果を得た。 第一に,明治期以降大正期中期までの不完全な地域人口統計を検討し,より正確な人ロデータを推計し,そこからさらに間接的に地域人口分析に必要な合計特殊出生率,純移動率等を推計した。第二に,これらの作業を通じて,地域人口と社会経済的要素との関連をみた。特に日本の人口転換との関連,都市と農村の出生力および死亡率の変化,農村の過剰人口と人口移動との関連で,江戸期の近世的人口メカニズムと昭和戦後期の人口転換を経る人ロメカニズムの過渡的な過程が明治前期に形成されたことを明らかにした。 第三に,以上の明治以降の地城人口変動分析をより深化させるために,地域人口の簡易データベースを作成すると同時に,出来るだけGISを利用した分析を行った。具体的には,まず人口動態の分析として1918-20年いわゆるスペイン風邪の拡散過程の分析,および島根県の世帯核の概念も含めた市区町村別出生率変動の分析を行った。人口動態を考慮に入れた人口移動の分析として,北海道への出稼ぎ移動の分析,地域の出生・死亡水準によって生じる余剰人口としての潜在的移動者(他出者)と実際の人口移動との乖離の分析を行った。そして,人口動態と人口移動を前提とする入口分布変動についてはGISを取り入れたベースマップによる市区別人口分布変動に関する分析を行った。
|