研究概要 |
本年度は,これまでの沖縄・北海道、および台湾における地籍資料の分析を元に、旧植民地において最も遅い時期に作成された朝鮮半島の地籍資料(地籍図・土地台帳など)ついて,地籍資料を用いた当時の都市と農村の変容に関する資料の分析と,補足的な資料収集・現地調査を行った。 第一に、近代日本による旧植民地における地籍資料作成の経緯について、おおよその把握ができた。9月には渋谷と山元が沖縄県に赴き、一昨年度に行った地籍資料の補足調査を行った。これは、一昨年には知られていなかった地籍図が那覇市の宮城(みやぐすく)自治会館に所蔵されていることが明らかになったためである。この資料は、「土地調査事業」以前のいわゆる「公図」に近いものと判断され、沖縄の地籍図作成における試行錯誤の過程が明らかにされた。またこの補足調査から、沖縄・北海道から朝鮮半島に至る近代日本の地籍資料作成の全体像がおおよそ理解された。 第二に,植民地期に日本人の大規模な農園のあった韓国・全羅北道の江景・成悦において澁谷と山元が8月に現地調査を行った。かつて日本人街が形成された咸悦について地籍資料を通じ、地主の多木肥料が土地を集積していく過程の分析を行った。2月末〜3月にかけ、澁谷・山元が以前予備的調査を行った西帰浦市において、河原は3月に韓国全羅南道羅州において戦前の日本人となし栽培の関連について調査を実施し、それぞれ地籍資料を利用し、戦前の朝鮮における日本人の移住のプロセスについて明らかにした。
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