本年度は、小笠原、沖縄およびミクロネシア諸地域に広く分布する行進踊りの源流を明らかにすることを目的に、東ミクロネシア地域に重点をおいた民俗芸能の交流に関する調査研究を行った。その際、オークランド大学大学院博士課程在籍中でポーンペイの歴史文化保存事務所非常勤研究員を務める長岡拓也氏の協力により、ポーンペイおよびモッキロにおける行進踊りに関する情報を収集整理した。そして、その成果および前年度までの研究成果について、8月に開催された国際伝統音楽学会(於:シェフィールド)にて口頭発表("A Consideration of the Origins and Diffusions of the Micronesian Marching Dance Based on Historical Documents and Oral Traditions from Pohnpei Island and Mwoakilloa Atoll")し、その分科会を構成するオセアニア音楽研究会のメンバーを含めた参加者らと議論を深めた。これを受けて、長岡氏とともに9月にはポーンペイにて追調査を行うとともに、ポーンペイに行進踊りをもたらしたと見なされるマーシャル諸島を訪問し、マジュロにて聞き取り調査を行った。その結果、20世紀初頭までにマリアナ諸島から東カロリン諸島にもたらされた行進踊りの原型と考えられる踊りが、それ以前から諸外国との接触機会が多かったマーシャル諸島で生成された可能性が極めて高いことが明らかになった。2006年2月にはヤップを訪問し、西ミクロネシアにおける行進踊りのパフォーマンスに関する現状について聞き取り調査を行うとともに、歴史文化保存事務所との連携強化をはかった。
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