18年度は成果のまとめと実験の継続を行った。初年度以降、市民に対する裁判員制度や司法参加に関する意識について調査を行ってきた結果を、雑誌『南山法学』に発表した。単に参加したい・したくないといった単純な分析にとどまらず、裁判および裁判での事実認定に関連する知識や、パーソナリティ・人口統計学的特性と裁判員制度に対する社会的態度の関連の改名に努めた。昨年度に引き続き、本科研の経費によって作成した模擬裁判ビデオを用いて、ノートテイキングが裁判の内容の理解に関してどのような影響を与えるかについて実験を行った。この実験については分析を進め、また19年度に不足分を実験する予定である。 また、裁判員裁判が始まるとすると、刑事裁判においてはこれまでよりも、裁判で用いられる用語を市民にもわかりやすく解説することや、口頭での説得が重要となる。そのため、市民の法廷用語に対する認識のあり方についての調査結果や、説得過程についての知見をまとめたものなどを公刊し、これらの議論の発展に資するとともに、今後の研究の展開の礎となることを企図した。 さらに、刑事裁判における裁判員及び裁判官の認識過程一般の問題として、記憶と記憶の情報取得限の問題がある。その問題に取り組むため、ソース・モニタリング、会話や記憶の回復による記憶内容の変容等についての実験研究の結果を公刊した。なかでも、素人たる裁判員にとって、どのような情報が裁判での事実認定に使用でき、あるいはできないのかの判断は容易でない。そこで、記憶の再生と誘導情報の関係をみる実験について公刊するとともに、今後の検討の基礎とすることとした。 以上に加え、国内外での学会発表を通じて積極的に成果を公表した。具体的には、International Conference on Memory、日本心理学会、認知心理学会、法と心理学会等の学術会議・学会の大会にて発表を行った。
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