租税債権の倒産処理法上の取り扱いは、重要な問題であるが、租税法学と倒産法学の協力体制を構築できなかったため、理論的にも解釈論・立法論的にも十分な解明がなされていない。本研究は、このような認識に基づき、租税法学者と倒産法学者が互いに協力し合い、以下の点を検討した。 (1)手続開始前の原因に基づく租税債権については、優先権を付与するか否か、するとして付与すべき範囲、租税債権の優先権の弊害の是正策。 (2)手続開始後の原因に基づく租税債権については、倒産債務者に関しどのような租税を課すかに関わる基礎理論。 以上の研究により、以下のような成果を得ることができた。 (1)租税債権は、実体法上一般優先権を付与されている以上、優先されるべきである。しかし、公示されないため、公示されない担保権と同様の弊害をもたらすほか、納税を猶予することにより、債務者の支払不能が隠蔽され、倒産処理手続開始を不当に遅らせることになる。そこで、優先の範囲を手続開始前の一定年限に限る必要がある。これを1年とする新破産法は正当である。 (2)破産手続開始後に破産財団の負担となる租税債権は、「共同の費用」という基準では画定できない。租税が費用となるという概念は租税法上も存在しないし、比較法的にも発見は難しい。そうではなく、ある租税が、破産手続開始後破産財団に関して発生すると認められる場合(つまり担税力があると認められ租税法の解釈として課税が許されると解される場合)に、そういう租税は財団債権として破産債権者全体に負担させようという趣旨であると解すべきである。つまり、破産手続における租税債権は、まず、それが担税力の見地から課せられるべき(ないし徴収されるべき)か否かを決定し、その課税が是認される場合には、破産手続においてもその賦課徴収は貫徹されるべきであるという基準で判断されるべきである。 (3)破産管財人の源泉徴収義務については、課されるべきであると考えるが、その確定の費用が破産債権者の配当原資から支払われることに鑑み、多額の費用が生じないような源泉徴収義務の範囲の画定や、仮に多額の費用が生じた場合の費用分担のルールの確定などが、不可欠の前提であると思われる。
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