研究課題
基盤研究(B)
16年度は本研究の研究課題である「選挙制度不均一の効果」について、理論の精緻化、仮説の操作化、データの作成作業をそれぞれ研究参加者間で議論し、各人の担当範囲を明確にするとともに、成果の発表に向けた次年度以降のスケジュールを具体化すべく、常時、専用のメーリング・リストによって活発に意見を交換し、ワーク・ショップも三回、開催した(6月東京、9月アメリカ・シカゴ、12月大阪)。こうした努力の結果、「政治制度間の不均一性がアクターの行動をどのように規定するのか」という理論的に興味深い問題に焦点を当て、特に「選挙制度の不均一性」が政党の組織のあり方を通じて政策的な凝集性、即ち「政党政治の質」を決定するという考えに至った。そこで、本研究の課題を「選挙制度の均一性」「政党の全国化」「政党の地方組織」「政党の利益集約機能」の四つの変数に分解した上で、それぞれについて考察し、それら相互の関係を分析することにした。以上の理論的な精緻化、仮説の操作化に加えて、データの整備も進めている。本研究の理論・仮説を検証するためには、地方議員データ、有権者データ、国際比較データ、フィールド・データ、公約データを収集し、分析可能なデータ・セツトを作成する必要がある。作業量は膨大であるが、各自、次年度には分析の結果を出すことができるよう必要なデータの収集を計画的に進めている。既に、地方議員データ及び有権者データは一部、利用可能であり、フィールド・データも二回の調査により、収集が進んでいる。国際比較データと公約データは作業の途上であるが、本研究の進行上、問題ない水準に達している。今後のスケジュールとしては、次年度の早い時点(6月を目途に考えている)で、分析結果を持ち寄り、本研究の全体的な方向性について、再度、議論を重ねた後、分担範囲の執筆に入る予定である。次年度中に本としての体裁を整え、成果を発表したい。現在までの研究経過は順調であり、目標の達成は十分に可能と判断している。なお、本研究は海外共同研究者の堀内勇作及び西川美砂両氏の多大の貢献を得ており、マネジメントは研究分担者の上神貴佳が担当していることを付記しておく。