今年度は非金融法人企業および銀行の資産選択行動について2つの面から実証分析を行った。 第1に、非金融法人企業の借入行動についていくつの銀行と借入契約があるのか、日本投資政策銀行の財務データを用いて実証分析した。このデータベースは上場企業がどの銀行からいくらの借入を行っているのか、情報が記載されており、企業と銀行のマッチングが可能となるというユニークな特徴を持っている。この情報に基づいて1982年から99年までの期間について、取引銀行の数がどのような要因によって影響を受けるのか、計量分析を行った。その結果、企業規模、収益性、流動性、代替的な資金調達手段の利用可能性が契約銀行数を決定することがわかった。特に、複数の銀行と契約を結ぶ誘因として流動性を確保するための保険的な要素があることが見いだされた。 もう一つの研究は、2001年3月以降とられている量的緩和政策のもとで、銀行が超過準備を日本銀行内に蓄積している理由を実証的に明らかにしたものである。この研究では銀行の個別の財務データに基づいて超過準備関数を理論的に導出し、その計測を行った。その結果、超過準備の保有が不良債権比率に代表される金融システムの不安定性、そして超低金利政策によってもたらされていることが明らかとなった。また、ゼロ金利以前の状態、金融再生プログラムの目標である不良債権比率の半減が達成された場合の定量的効果についてもシミュレーション分析を行った。その結果、超過準備が現在の水準の6割から7割の水準まで低下することがわかった。
|