研究概要 |
最終年度である平成17年度においては,住環境における都市景観の影響,住民の価値観と住環境認知の関係,容積率緩和策が道路拡幅にどのような動機付けとなるかを分析した。 都市景観については,景観の標準化された調査,主成分分析を用いた景観評価要素の抽出,ヘドニック分析手法による景観評価要素の経済価値の分析を行った。東京および北九州市のデータを分析した結果,建物の調和および近隣の緑地環境が景観要素として重要であり,有意な正のヘドニック価格を有していることが判明した。分析の結果は,住民による共同した景観保全の取り組みが重要であり,そのための都市政策が妥当であることを示している。 住民の価値観については,住民の選好形成過程における住民の価値観と居住履歴の効果を分析した。東京都市圏において最近住宅を購入した2000人に対するアンケートの分析から,居住履歴と将来の住宅選好との間に居住者の価値観が介在することを明らかにした。 容積率緩和策が道路拡幅にどのような動機付けとなるかについては,ヘドニックアプローチにより,敷地形状および形状の効果を分析し,密集市街地における道路拡幅における容積率緩和策の分析に応用する。分析の結果,敷地の規模や形状に大きく影響されることが示された。道路拡幅による便益を享受するには,敷地規模が一定以上の規模であり,かつ一定の画地形状条件を満たしていなければならない。そうでない場合には,容積率緩和というような都市政策を講じても道路拡幅に協力する動機にはなりえないことが示された。密集市街地の再開発などにおいては,画地形状に配慮した施策の実施が不可欠であるといえる。
|