研究概要 |
研究代表者の大住は、伊ヶ崎、池下と共同で、前年度の調査研究をもとに論文を作成し、学会、国際会議などでの報告、論文の刊行を行った。また、引き続き、関連文献の調査や、国内外でのセミナー報告、資料の収集、現地調査などを行った。論文については、物的資本をより効率に用いるようなイノベーションとイノベーションを促進するために必要な人的資本が経済成長に及ぼす影響について議論した論文(共著)を2編作成した。「発展途上国におけるイノベーション政策と持続的成長」は、既に刊行され、‘Capital Augmenting Innovation, Human Capital, and Sustainable Development'は、2005年4月の‘Innovation Policy and Management in Changing Asia'や2005年6月の‘Business, Management and Economics in a Changing World'などの国際学会で報告された。また、旭川市、オーストラリア・メルボルンにおけるセミナー報告、意見交換や資料の収集なども行った。さらに、池下、大学院生の内田君と共同で、定期的に研究打ち合わせを行い,その過程で不完備契約理論を用いたイノベーション政策の分析を行った。具体的には不完備契約に関する基礎的な文献を収集,検討した後に,不完備契約と成長モデルとの統合を試み,その成果として論文"Incompleteness of Innovation Contract in an Endogenous Growth Model"を執筆し,オーストラリアのLa Trobe Universityに行われたセミナーで発表を行い有益なコメントを受けた。 さらに、伊ヶ崎は、単独で、都市における技術と最適環境政策について分析した「人口、技術選択、および環境政策」を刊行し、イノベーションと人的資本と環境政策との係わり合いについて分析した‘R&D, Human Capital, and Environmental Externality in an Endogenous Growth Model'を刊行予定である。学会では、環境政策や都市の集積に関する論文‘Population, Technological Conversion, and Optimal Environmental Policy'、環境問題におけるゼロエミッションと最適成長に関する論文‘Extended Kindergarten Rule and Sustainable Development'を報告した。 最後に、池下は単独で、政府による知的財産保護がイノベーションや経済成長に与える影響について研究を行い、論文"International Effects of Intellectual Property Rights Protection on Growth and Welfare"を執筆した。本論文では,先進国と途上国の2国からなるモデルを用いて,各国の知的財産保護強化が経済成長を促進する一方で,途上国政府に低い保護水準を選択する誘因が存在し,成長率が低くなる可能性があることを示した。
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