研究概要 |
2006年度においては,2004年度の中国、OECD、UNCTAD、2005年度のトルコやオーストラリアにおける学会報告や調査を基に論文や著書の刊行を行った。主に政府によるイノベーション政策と経済成長の関連性について研究を行い,論文や著書の執筆を行った。2006年度4月には、大住・池下・内田は、中国,上海で行われたAsialics 3^<rd> International Conferenceに参加し,研究開発成果の所有権配分がイノベーションにどのような影響を与えるのかについて研究成果を発表し,中国をはじめとするアジア諸国の研究者と議論を行った。また同研究については6月にトルコのイズミールで行われた2^<nd> International Conference on Business, Management and Economicsにおいても研究報告を行い,活発な議論や交流を行うことができた。 また、大住・伊ヶ崎は、ロシアと中国を訪問し、イノベーション、制度および経済成長に関する理論的・実証的研究を行った。ロシアでは、モスクワ郊外のポドルスクにあるInstitute of EconomicsとモスクワにあるPlekhanov Russian Academy of Economics を訪問し、経済成長著しいBRICSの一角をなすロシアの経済の現状や今後の見通しなどについて調査し、同研究所の研究者たちと議論を行った。特に、Plekhanov Russian Academy of Economicsでは、イノベーションと経済成長についての特別講演も行った。韓国では、同国予算政策庁のナムクアンヒョン氏を訪問し、韓国経済の現状や同国の経済政策について議論した。また、JaiNeung Collegeの学長である李基雨氏と韓国の大学制度や大学と経済成長のエンジンとしてのイノベーションとの関係についての議論もおこなった。中国では、中国人民大学を訪問し、楊院長・趙教授・胡副教授と会い、中国の西部大開発と環境や経済発展との関係や経済制度と経済成長との関係について議論や意見交換を行った。 次に、伊ヶ崎は独自に下記のような研究を行った。論文においては、‘R&D, Human Capital, and Environmental Externality in an Endogenous Growth Model'を公刊した。この論文では、RomerやGrossman and Helpmanなどによって議論されたバラエティー拡大型のイノベーションとLucas等によって議論された人的資本のモデルを統合し、さらにそこに、環境汚染の問題組み入れ、1つの体系化されたモデルを構築した。そして、持続的成長に必要となる条件を導出した。 池下は独自に知的財産保護制度と経済成長の関連性について研究と行い,学会報告を行った。特に知的財産保護政策の貿易を通じた波及が各国のイノベーションや経済成長にどのような効果をもたらすかについて研究成果をまとめ,6月に福島大学において行われた日本経済学会春季大会にて研究報告を行った。また夏季休業中には,日本経済学会での討論をもとにモデルを改良し,論文の修正を行い,九州大学で行われた研究会,11月に行われた日本応用経済学会秋季大会や12月に行われた日本経済政策学会国際コンファレンスにおいて研究報告を行った。また論文としては『開放経済における知的財産保護水準の戦略的決定と経済成長』を執筆し、政府による知的財産保護政策の戦略的決定がイノベーションにどのような影響を与えるかについて分析した。 最後に、大坂は国際援助の環境変化に関する分析と、技術および制度革新下の地域経済に関する研究を行い、論文として公刊した。
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