研究課題
近年の東アジア域内の貿易急増の原因として、産業内貿易だけでなく製品内貿易の影響が無視できない。この生産工程の分断化(フラグメンテーション)の増大は、同時に環境負荷の国際的な分断化を伴い、従来の国際的な環境負荷抑制政策の議論を難しくしている。本研究は東アジア地域における貿易構造の変化による環境負荷交換の理論モデル化と実証分析を試み、同時に労働、企業会計、国際資本移動の側面からも分析を進めている。平成17年度は、文献サーベイを中心とした予備的研究を引き続き行った。また、理論モデル研究および実証分析の方法構築を進めた。具体的にはフラグメンテーションの類縁概念である、垂直的国際分業の観測のために、D.Hummelsa et al.(2001)によって提起されたvertical specialization share(VS)概念を発展させ、国際産業連関表を用いて中間財貿易の状況を観測できることを示した。Hummelsaらは国別の非競争輸入型産業連関表を用い、中間財輸入の効果が輸出に及ぼす影響を計測したが、輸出側については中間財輸出を分離して分析することはできなかった。それに対して本研究では国際産業連関表を用いることにより、輸入と同様、輸出側でも中間財を分離し、そのVSを求めることができた。その結果、より連鎖的になりうる可能性のある中間財のみのVSを各国間で調べることができた。そして90年代前半における国際間中間財フローの存在と、また電気・電子部門でのVSの伸張が著しいことを示せた。さらに、域内のグループ化によるVS計測により、この増加しつつある電気・電子部門でのVSは、グループ外に流出するよりもグループ域内での連鎖の方が大きいことを示せた。このことにより、間接的にフラグメンテーションを示唆する結果を導くことができた。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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