研究課題/領域番号 |
16330049
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤田 渉 長崎大学, 経済学部, 教授 (30264196)
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研究分担者 |
福澤 勝彦 長崎大学, 経済学部, 教授 (00208935)
岡田 裕正 長崎大学, 経済学部, 教授 (40201983)
須齋 正幸 長崎大学, 経済学部, 教授 (40206454)
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キーワード | 環境政策 / 国際貿易 / 垂直的産業内貿 / フラグメンテーション |
研究概要 |
近年の東アジア域内の貿易急増の主たる原因と考えられる生産工程の分断化(フラグメンテーション)や垂直的産業内貿易の増大は、同時に環境負荷の国際的な分断化を伴い、従来の国際的な環境負荷抑制政策の議論を難しくしている。本研究は東アジア地域における貿易構造の変化による環境負荷交換の理論モデル化と実証分析を試み、同時に労働、企業会計、国際資本移動の側面からも分析を進めた。 前年度までにHummels, et. al.によって提起されたvertical specialization share(VS)概念を発展させた国際産業連関表を用いた中間財貿易の状況の観測を、国別・部門別の詳細なVS要素にまで利用可能であることを示したが、最終年度はさらにその結果をOECD-IEA等の国別・部門別・エネルギー源別のエネルギー消費データ、および二酸化炭素排出原単位データと結合させて分析を進めた。 この結果、これらの東アジアにおける貿易パターンや国際的な産業構造の巨大な変動は、一国の産業政策や、資本・労働といった生産要素の配分の制御を困難にする可能性も高く、特に注目すべき点として、エネルギー消費構造、ひいては二酸化炭素排出などの環境負荷構造が、政府にとって不可視化あるいは制御困難になる可能性を示した。なぜならば国境を越える連鎖的かつ循環的な二酸化炭素排出等の負荷交換は、一国の環境負荷抑制対象を把握困難にする可能性が高いからである。また従来型のLCA(Life Cycle Analysis)も信頼性を失うであろう。そして、国際的に域内どこにでも移転可能なモジュール化プロセスにおける環境排出強度は多国籍企業が決定することになる。その結果、国内において垂直的かつ総合的な省エネルギー化や環境対策のアーキテクチャを維持できない場合、わが国の省エネルギー・環境技術の優位性は、いずれ退化する恐れがあり、そのための環境技術政策の必要性を示した。
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