研究概要 |
日本における為替レートの予測にサーベイ・データについては,従来,国際金融情報センター『(JCIF)が1985年5月に開始した「為替予測アンケート」(以下,JCIFサーベイ)が体系的かつ唯一の資料として位置づけられ,先行研究において中心的な役割を果たし,研究が蓄積されてきた.本来,こうした研究蓄積は,JCIFサーベイが外国為替市場の参加者の期待形成を的確に反映したものであるとの前提の上ではじめて意味をもつ。しかしながら,日本では,従来JCIFサーベイが唯一長時間に亙って利用可能なサーベイ・データであったために,その前提の当否を判断する術がなかった。そもそも,原点に立ち返った場合に,JCIFサーベイを基に得られた実証結果は現実の外為相場に対する期待形成を十分に捉えたものといえるのであろうか,ここでの結果を基に経済学的なインプリケーションを判断することは適切であろうか,市場参加者の期待形成様式は変更されたのか,といった問題に対しても確信が得られているではないのである。とりわけ,これらの問いに対する従来の知見が,JCIFサーベイにおける調査方法に起因する問題なのかについて正しく認識・評価するのが,この分野の研究の更なる発展にとっても喫緊の課題といってよい。 そこで,JCIFサーベイに基づく先行研究の結果を,JCIFサーベイより5年ほど古くから蓄積されてきた世界経済情報サービス(WEIS)による「為替レート予測レポート」(以下WEISサーベイより再検討を行う.WEISサーベイでは必ずしもJCIFサーベイから得られる結果が追認される訳ではなく新たな知見が多く得られる。例えば,WEISサーベイにおける予測は,期近予測と期先予測との予測で特徴的な差異がみられず,ともに過去の情報と有意な関係になく,その意味で「合理的な予測」であると指摘できる.ここからは,為替相場自体の安定性に関しても従来とは異なる重要な含意が得られる。当研究については,日本経済学会(2006年6月)に発表予定.
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