財政学の視角から、近年のアメリカ財政再建と、アメリカ型福祉国家の重要分野の関連を分析した。 20世紀末の冷戦終焉がかえってアメリカの軍事的な活動を拡大したことと、「ニューエコノミー」的状況下で画期的に進行したアメリカ型福祉国家の再編という2つの大きな要因を背景とする連邦財政の構造変化を総合的に分析することを試みた。 (1)平成18年10月に、アメリカの首都ワシントンに出張した。財政再建にかかわる部分の議会資料の収集を行った。CISやIMFにおいて、国際的な視野からのアメリカ財政の動向にかかわる意見収集も行った。マクロ的な視点からアメリカ財政を見るときに、年金財政という長期的な収支動向を織り込むことの重要性を認識できた。 (2)さらに、財政再建に向けての福祉国家の再編の重要な一環であった福祉改革について、現場に近い側面に立ち入るために、ワシントン近郊のフェアファックス郡政府の福祉部での調査も実施できた。詳細な内容分析は、平成19年度に持ち越すが、とりあえずの成果として、「小さな政府」的な方向の福祉国家再編の具体的な事例として、福祉給付の抑制と表裏の関係で、就労促進的な施策が展開され、貧困者の労働市場への復帰を強く促す政策を実施されるような誘導策があったこと、さらに、その就労促進策と教育財政の関連も確認できた。 (3)基礎年金である社会保障年金について、21世紀におけるベビーブーム世代の引退が予想され、その年金財政の長期的な健全性を確保するための積立金が、連邦財政の一般基金のフローを背後から支える役割を果たしたことを、計数的に確認できた。
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