研究概要 |
下の項目11に見るように,今年度は主として州,地方債の分野を取り上げてアメリカ型福祉国家の特徴を検討した。アメリカ,モデルの特徴は,何でも市場メカニズムに任せるというのではなく,第1に市場メカニズムを最大限に効率化するためには,その外側に市場論理とは異なる公共性の論理に規定される政府部門を設定することを必須条件としており,第2にその政府部門における効率性や透明性を確保,維持するために,市場メカニズムを活用するのである。アメリカの州,地方債は,その特徴を体現するものである。 州,地方債はあくまでも州,地方政府による公共的な目的のための政策を賄うために資金を調達するものであるが,その公共性を理由に効率性が無視されることがあってはならず,公共性と効率性のバランスを達成する仕組みとして,その資金調達のための州,地方債が,金融市場で投資対象として認められることが要請されるというアメリカ的な形が取られるという意味である。 利子免税という租税優遇措置が正当化されるには,使途の公共性が強く,しかも,租税優遇措置によって援助されなければ実現性が弱い案件であることが条件となる。さらに視点を変えて,そのことをみると,公共性を理由に効率性がまったく欠けるものに陥ってもならないということになる。
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