本研究の目的の第一は、東アジア域内における経済的相互依存の程度を、実物面・金融面・マクロ面から実証的に計測することである。貿易・直接投資を通じた域内経済リンケージ、資金フローや金利・株価・為替の域内連動、マクロ経済変数の域内相関・波及の大きさとその時系列的な変化を数量的に把握する。第二の目的は、東アジアでの金融・通貨と貿易・投資の両面での域内協力の制度化について考察することである。第三の目的は、東アジアにおける域内金融アーキテクチャーの構築、すなわち経済サーベイランスや国際流動性支援の枠組みの強化、域内為替レートの安定化の枠組み作りなどについて展望することである。 平成16年度においては、第一の目的についてはほぼ半分程度を達成し、第二、第三の目的についてはほぼその殆どを達成した。第一の目的で残された分析は、東アジア地域のクロスボーダーの資金フローや金利・株価・為替レートの連動など金融面での域内リンケージに関する数量分析を行うこと、東アジア域内における為替レート制度の実態を為替レートの実際の変動だけでなく、外貨準備、金利の変動、国際資本移動の程度などを視野に含めつつ、数量的な分析を行うこと、日米欧の3極通貨を用いた通貨バスケット制やアジア通貨単位の基礎となるであろう、為替レートの諸インデックスを構築することである。これらの作業はいずれも現在進行中である。 これまでに得られた分析結果に基づき、すでにいくつかの論文を作成し、あるいは作成中である。うち、一本の論文は学術誌に掲載の予定であり、その他の論文にはすでに国際会議等で発表し、コメントを得、改訂段階に入っているものもある。平成17年度中に当初の目的である全ての分析を終えた。
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