研究課題
本研究においては、1997-98年のアジア通貨・金融危機の教訓を経て、東アジア地域においてどのような国際金融システム、通貨システムが望ましいのかという点を実証的、政策的な観点から分析を行った。そのために、(1)アジア通貨危機の経験からの教訓を抽出し、(2)東アジア域内の経済的相互依存の程度を数量的に把握し、(3)金融協調(金融統合の制度化)に必要な一連の政策を評価しつつヨーロッパ等の経験を踏まえてアジアの将来の金融アーキテクチャーのあり方について展望した。具体的には、第一に、通貨・金融危機の教訓として、危機の回避が最重要であり、グローバルな枠組みと各国ベースでの取り組みに加えて地域的な枠組みが欠かせないことを主張した。第二に、東アジア域内における経済的相互依存の程度は、実物面・金融面・マクロ面からみて極めて高いことが実証された。第三に、東アジアにおいて金融協力体制を強化するためには、域内自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)など貿易・投資の両面での域内協力が欠かせないこと、地域的な金融アーキテクチャーの構築には国際流動性支援の枠組みや地域経済サーベイランスの強化、域内金融統合や域内為替レートの安定化の枠組み作りなどが必要であることを展望した。本研究の目的は概ね達成され、英文、和文で10本以上の論文を完成させた。うち多数が雑誌等に出版される予定であり、また、英文論文の大半をまとめて単独の研究書として出版する予定でもある。
すべて 2005
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日本経済研究センター会報 No.932
ページ: 5-12
Eastern Economic Journal Vol.31, No.2
ページ: 185-207
International Journal of Finance and Economics Vol.10, No.2
ページ: 97-116