研究課題
平成17年5月に研究会を開催、メンバー全員で本年度の全体計画を策定し、成果発表の方法について話し合った。8月に研究代表者・渡辺が渡英し、英国企業(製造業)において管理職、人事担当者、及び従業員に対し面接調査を実施した。この間、渡辺はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのアンソニー・ギデンズ教授と研究会を持ち、研究課題について討論した。また10-11月には、千葉に所在する日本企業(大型小売業)の管理職、人事担当者、及び従業員を対象に面接調査を実施した。面接調査により得られたデータを分析した結果、以下のような知見が得られた。1.日本では、多くの企業が市場原理の導入によって、業績の低迷から脱却しようとしている。現在雇用を伸ばしている大型小売業や外食産業では、雇用のフレックス化が進み、正社員の数が削減され、パートタイマーや契約雇用者の割合が増大している。こうした産業においては、必要労働の8-9割を非正社員に依存しているケースも多い。このような職場では、今や大多数を占めるようになった非正社員のモティベーションをいかにして維持・増進するかが業績向上の重要な鍵となっており、彼らに対する人事制度の変革が進められている。2.これに対し、英国ではサッチャリズムがもたらした市場至上主義への批判から、ブレア政権下では「社員重視」の経営への方向転換がなされている。たとえば英国政府が推進する「仕事と生活のバランス」に関する包括的アジェンダにより、企業ではフレックス・タイムや母親・父親のための育児休業など、「家族に優しい」フリンジ給付が制度化され、育児を支援する職場環境の整備が図られている。その結果、より良い雇用環境を提供することのできる大企業の正社員の満足度は向上する傾向にある。しかし一方、そうしたゆとりのない中小企業では、有能な社員を確保することがますます困難になっており、両者の格差が拡大する傾向にある。さらにアジェンダ関連の法律の条項には、子供の世話、特に幼児の世話に関する規定しか存在しない。法律の実施に伴い、幼児を抱える同僚が帰宅したり、フレックス・タイムを実行する上でより大きな権利を持つようになるため、家族の世話をする責任の無い社員は不利な立場に置かれるという不満も出ている。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (11件) 図書 (3件)
社会学論集 30号
ページ: 1-26
Sociological Studies 29号
ページ: 19-50
複雑系、諸学の統合を求めて(統合学術国際研究所編)(晃洋書房)
ページ: 177-187
The 21st-Century COE Program, 2nd Symposium, Creation of Agent - Based Social Systems Science
ページ: 135-136
Deutsch-Japanische Gesellschaft fur integrative Wissenschaft Museum Koenig, Bonn, Oktober 31.
ページ: S15
進化経済学論集9 9号
ページ: 625-632
Catalyzer No.3
ページ: 16-17
『日本における公共哲学の構築のための包括的研究-地球的公共哲学ネットワーク形成に向けて』科学研究費研究成果報告書(基盤研究(A)(1)代表者・小林正弥)
ページ: 34-43
社会学評論 Vol.56 No.3
ページ: 50-61
数理社会学入門(数土直紀, 今田高俊編)(勁草書房)
ページ: 3-26
ソシオロジカ 29巻1-2号
ページ: 44-62