研究分担者 |
松田 美佐 中央大学, 文学部, 助教授 (30292783)
島崎 哲彦 東洋大学, 社会学部, 教授 (00287559)
岩佐 淳一 茨城大学, 教育学部, 助教授 (10232646)
内田 康人 育英短期大学, 保育学科, 専任講師 (60389773)
浅岡 隆裕 立正大学, 文学部, 専任講師 (10350290)
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研究概要 |
本研究は,ケーブルテレビという地域メディアを中心に,地域情報の制作と流通過程の現状と課題点を考察したものである. 地域情報は,1990年代以降いくつかのメディア装置や仕組みが新たに加わることにより,その流通量が著しく増加している.さらに《担い手》といった点では,プロフェッショナルとしてのメディア産業従事者ではない人たちによる制作や発信の試みも相次いでいることが特徴である. ところで地域情報の発信主体として大きな位置を占めているケーブルテレビは,いま大きな曲がり角に来ている.その主要な原因は,1.法制度を含めた国や自治体の政策転換,2.技術革新と産業・業界側のニーズの変化,3.市民・住民そして受け手利用者の情報ニーズの変化とメディア参加,といったことに求められる. さらにこれらの諸要因をより実態層で捉えるために,以下3つのアプローチを採用し,全国の事例を調査した. 1.自治体合併に伴うケーブルテレビの機能変化,2.地域住民による番組制作,3.ケーブルテレビ局間の連携とネットワーク化. 調査手法は,事業者や活動参加者に対するヒアリング調査を各地で行い,また一部では住民に対する質問紙を用いたアンケート調査とインタビュー調査を実施した. 各地の状況はそれぞれのローカリティに規定されているために,より一般化した知見を取り出すことは困難であるが,外部・内部環境の変化に対応する形で,ケーブルテレビが地域メディアとしての存在意義を追求し始めた結果として,新たな展開に向けて走り出しているという現状が確認されたのである.また地域住民やNPOによる自発的な情報制作・発信が静かにしかも着実に定着しつつあるという事実にも目を向けなくてはならない. 今後はこれら複線的な情報・コミュニケーション回路が地域社会に根付き,地域相互で制作・発信主体が情報交換や切磋琢磨を続けることで,より豊かな情報環境が形作られるものと思われる.
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