研究概要 |
本研究では、3ヵ年にわたって、地域において発生する生活・環境問題に対応して現実に展開されている地域福祉活動・ボランティア活動で発生している困難事例について臨床研究を行ってきた。困難事例を総称してチャレンジドケースと呼んできたが、そのチャレンジドケースの構造分析を通してボランティア活動の「場」の実相をリアルに把握しつつ、人々の自由な関係性に溢れ福祉的機能をビルトインした地域社会の形成方向とその条件について検討することを主要な研究課題としてきた。 3カ年間にわたって取り組んできたチャレンジドケースの集約とデータベース化を基盤に、その理論的総括として以下の通り研究成果をまとめ報告書とした。 (1)収集したチャレンジドケースの事例分析およびそのデータベース化 これまで京都、滋賀などのボランティアセンターで収集した160を越えるボランティアのチャレンジド及びサクセスケースの事例研究とそのデータベース化を行った。ボランティアの活動展開過程を左右する複数の契機・分岐点の導出を行い、両義性を取り込んだボランティア活動の理論モデルを提起した。 (第1,2,3,4,12章) (2)大学ボランティアセンターにおけるボランティアプログラムの開発研究 大学ボランティアセンターに求められる機能・教学的位置づけに関する調査研究を行うと同時に、具体的なボランティア活動に関する教育プログラムの研究・開発を行い、ボランティアサービスラーニングについての一定の研究をまとめた。(第10,11章) (3)コミュニティにおけるボランティア資源開発の研究 コミュニティにおけるボランティア資源の組織化・持続化並びにボランティア振興方策の計画化(地域福祉計画)及びボランティア・コーディネーターに関する研究も行ってきた。(第7,8,9章) (4)障害児の放課後活動支援事業所の調査 多くのボランティアセンターにおいて困難事例として表出している障害児の放課後保障に関して、2006年10月に全国の児童デイサービス事業における学齢期障害児の受入れ実態把握調査を実施し分析検討を行なうなど、活動支援の方向をまとめた。(第5,6章)
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