研究概要 |
[研究I]会話発達のアセスメントのための基礎研究 身近な他者との会話場面における幼児のナラティブ構造の発達過程を検討することを目的とし,3〜6歳の幼児とその母親64組を対象に,直前の「ケーキ作り」経験についての母子会話を分析した。その結果,3歳ではケーキ作りルーティンの10要素中,自発的に言及する要素数は2程度と少なく,また,節を関連付けて述べることや接続表現の使用も少なかった。4歳になると自発的に言及する要素数が4程度と約2倍に増加するとともに、節を「時間」関係で関連付けるようになり,接続詞や接続助詞の使用頻度も増加した。さらに5,6歳になると「因果」「比較」「逆」等の多様な関係において節を関連付けるようになった。3歳児のルーティン要素への言及は母親による質問等の発話に依存していたが,加齢に伴いその依存度は低下した。 [研究II]会話の発達支援プログラムの開発と実験的支援 広汎性発達障害の男児1名に対して、フィクショナル・ストーリーの産出の支援を行った。先行研究より、"物語スキーマに即した視覚的手がかりの提示"、"登場人物の意図情報の意職化"がフィクショナル・ストーリー産出を促進すると考え、吹き出しを含む絵本作りを通して指導を行った。指導の結果、語数やCU数は指導後期にかけて増加した。また、絵に直接描かれていない情報を含むCUの数が増加した。結束性や物語構造レベルには指導通した変化は認められなかった。また、対象児は、指導後期に指導場面以外でも因果性を含む絵本を作成した。絵に描かれていない情報をふくむCUが増加したのは、指導を通して物語スキーマが形成されたためと考えられた。また、ナラティブのアセスメント・支援においては、言語で表出されるナラティブの評価に加え、物語スキーマといった内的知職の水準の評価、それに基づく支援が必要であることが示唆された。
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