研究分担者 |
余語 真夫 同志社大学, 文学部, 助教授 (90247792)
佐藤 健二 徳島大学, 大学院・人間・自然環境研究科, 助教授 (10318818)
河野 和明 東海学園大学, 人文学部, 助教授 (30271381)
湯川 進太郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (60323234)
磯和 勅子 三重県立看護大学, 看護学部, 助手 (30336713)
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研究概要 |
本研究は,感情の抑制や表出が心身の健康にどのような影響を与えるかを解明することを目的とし,PET研究班,トラウマ研究班,目常的感情研究班の3つの研究班を構成し,研究を遂行した。PET研究斑の任務は,感情抑制・表出に関する神経的・生物学的メカニズムを解明することであった。陽電子断層撮影法(positron emission tomography:PET)による脳機能測定と各種の生理反応の同時記録を組み合わせた研究方法により,感情制御の脳-身体基盤に関する重要な知見を得た。そこでは,前頭眼窩野,内側前頭前野を中心とした前頭ネットワークの重要性が示唆された。トラウマ研究班は,トラウマ(心的外傷)的体験を,能動的に認知処理(意識化・言語化・洞察・意味づけ)することが心身にもたらす影響について実験心理学的方法により検討した。その結果,感情の言語化は,認知的構造や認知的機能を変容することで心身の健康に実際に影響を与えうること,そこではワーキング・メモリ機能が中核的な役割を果たすことが明らかになった。これは,感情に関する臨床心理学・健康心理学的な問題と認知心理学的な概念を結びっける成果であると言える。日常的感情研究班は,社会心理学的な調査的方法ど実験的方法により,感情の抑制・表出の個人差要因と,感情抑制・表出の中・長期的な効果を解明することを目指した。その結果,感情抑制・表出の個人差を規定する要因として自己隠蔽傾向と抑制的会話という特性が浮かび上がり,その心理学的性質が詳細に検討された。また日記という形式での怒り感情表出により,比較的長期間にわたり有効に不快感情を制御しうることを見出した。特に後者の成果は,これまで主として実験室で研究されてきた感情の抑制・表出の問題とその知見が,日常生活にも応用・実践が可能であることを示唆するものであり,健康心理学的に重要な意義を持つと考えられる。
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