研究概要 |
外科矯正患者の非言語的コミュニケーションに着目し、手術による顔の変化の前後で何が変わるか,ほどよい適応のためには何が重要なのかを談話行動の観察と解析を通して明らかにしつつ,術後の心理社会的適応を援助することを目標としたリラクセーション課題をデザインすることが本研究の目的である。 3年計画で研究をまとめることにしているが,初年度の本年は,これまで蓄積してきた対他者関係の中で意識される心理的障害に関する質問紙調査の洗い直しをはじめとした情報収集を行い,術後の患者が特に苦痛を感じる状況についての検討を進めた。その結果,患者が表明する苦痛な状況をカテゴライズすることは困難であり,むしろ実際のやりとりの現場でのコミュニケーション行動を直接観察することが有効であることが確認された。そこで,学生被験者を対象として,本研究の目的に適う観察揚面のセッティングについて検討した。外科矯正患者における顔の表象の変化を取り扱うにあたっては,細心の倫理的配慮が必要である。そのため被験者が自分の顔や行動をことさらに意識せずに参加できる/思わず構えてしまう条件,提示すべき話題や場面等についての内省報告を蓄積し,各条件の特質を分析しているところである。 同様にリラクセーション課題の設計についても被験者の心理的負担がより少ないデータ収集方法が必要とされる。当初は表情筋のリラクセーションを主眼に置いた課題を設定していたが,予備調査を行ったところ上体のリラクセーション課題の方が適切であることが明らかとなった。今回新たに導入した超音波方式3次元動作解析装置は簡便な方法で動作の様態が記録でき,また被験者にその場でフィードバックすることが可能である。現在,リラクセーション課題が気分に及ぼす影響に関して検討しているところである。 これらの研究を中間的にとりまとめ,平成17年度に国内外の学会で報告する予定になっている。
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