研究概要 |
外科矯正患者の非言語的コミュニケーションにおいて,顔立ちの変化の前後で何が変わるか,ほどよい適応のためには何が重要なのかについて検討を行なってきた。 これまでの調査では,外科矯正治療を希望する患者は下顎の変形が他者によって「見られる」ことをことさらに意識し,些細な事柄にとらわれやすく,問題を悉意的に解釈しようとする傾向があることが示された。また,手術前の不満の強さ,手術後の感覚異常の残存の有無,顔立ちに由来する支障感の変化,手術直後の苦痛の強さ,異性の前で外見を気にする程度が手術後の顔立ちに対する不満の低減を規定する要因であることが明らかになった。これらの知見から,手術後の患者の適応を心理的に援助するためには,(1)手術前にみられる自己認知の「硬さ」にはたらきかけること,(2)治療を受けることに対する防衛的態度や罪悪感を含む様々な思いを取り上げ,共有することが重要であると考えられた。 患者の特徴として想定された「硬さ」に対して臨床動作法および主動型リラクセイション療法を参照して椅子に座ったままで気軽に実行できるようデザインした上体(肩・頸まわりを中心とした)弛めを施行したところ,被験者の表情および気分が活性化することが明らかとなってきた。また課題後に語られる体験の内容も豊かなものになる傾向が認められた。このような効果が課題遂行直後の一時的なものに終わるか,日常生活にまで般化するのかについては,なお長期的な検討が必要であるが,今後も研究を続け,技法として洗練させていく予定である。
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