研究課題
海外調査としてフランスおよびドイツにおける臨床心理学の資格と歴史について現地にて取材を行った。フランスでは臨床心理関係の資格自体は随分前からあるものの、問題のあるセラピストが出たりしたために、「心理療法士」なる称号と職務に関する厳密な国家資格化が必要だという認識にいたっていること、だが現在の主流である精神分析派からの反対が強く具体化しないままペンディング状態であること、などが分かった。ドイツではベルリン(「ドイツ心理学者職能組合」(BDP)、「ドイツ心理療法士会」(BPTK))、イエナ(大学附属病院)とドレスデン(ドレスデン工科大学)において調査を行った。ドイツの心理療法士の資格や活動内容は、基本的に医学モデルで病院臨床が主であり、学校臨床は「心理療法士」の分掌にまったく入ってこないこと。行動療法と精神分析のみが、「心理療法」として公認されていること(→医療保険の適用)。ロジャーズは認知されていないこと。心理療法士の養成課程&クリニックは、たとえ大学に設置されていても、大学教育(高等教育)とは別の枠組みで捉えられていること(ゆえに大学と異なり、有料である)などを明らかにしえた。たとえばドレスデン工科大学附属の心理療法施設は、大学附属機関でありながら有限会社であることなど、新しい発見もあった。また、2007年3月に英国・アバティ大学John McLeod教授を迎えて「心理療法におけるエビデンスとナラティヴ」を開催。McLeod教授の講演「How could Psychotherapy develop from the modern forms to post-modern」を巡り、モダン・ポストモダンという時代相と臨床心理学の関係について歴史的観点から討論を行った。最後に、学問史方法論の開拓として、日本の臨床心理学の盛衰について、複線径路等至性モデルを適用した心理学史の叙述を行った。
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Ritsumeikan Journal of Human Sciences 13
ページ: 133-144