研究課題
基盤研究(B)
ラットがさまざまな記憶課題を学習しているプロセスをとおし、マルチニューロン活動を記録し解析した。特に音条件性位置弁別課題、すなわち、周波数の異なる2種類の音刺激(音A、音B)と左右どちらかの穴へ鼻を入れるノーズポーク反応(反応R、反応L)の組み合わせを覚える記憶課題を中心的に用いた。そして、音A→反応R、音B→反応Lという対応を学習させ、課題を学習する約3日間のプロセスをとおして、海馬や前頭皮質のマルチニューロン活動を連続記録した。記録後、本研究期間中に確立した独立成分分析(ICA)による独自のリアルタイム式スパイク・ソーティング法を活用することにより、記録したマルチニューロン活動を個々のニューロン活動に分離し、さらに興奮性の錐体ニューロンと抑制性の介在ニューロンも区分し、従来の化学的シナプスだけでなく電気的シナプス(gap-junction)を介したニューロン間結合も検出し解析した。その結果、個々のニューロン活動、化学的シナプスを介したニューロン間の相互作用、電気的シナプスを介したニューロン間の相互作用の全てが、課題の学習に伴うラットの行動変化のプロセス、すなわち記憶形成のプロセスにより変化することがわかった。また他の課題として、新しい環境の自由探索課題を導入し、新規の環境を探索し次第に既知な環境へと記憶が形成されるプロセスの海馬のニューロン活動についても解析した。その結果、海馬ニューロンはその樹状突起から曖昧な場所情報を入力信号として受け取り、自由探索時の学習により次第にそれを特異的な場所情報に変換し、軸索から出力するようになることがわかった。すなわち、場所の記憶形成における海馬ニューロン内の情報変換について実験的に明らかにした。また本研究をとおして、マルチニューロン活動を長期間記録し解析する技術を開発し、ブレイン-マシン・インタフェースへの応用を可能とした。
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http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~ysakurai/