午後に生じる眠気の改善策として30分以下の短時間仮眠が検討されており、眠気の低減やパフォーマンスの向上が確認されている。短時間仮眠には徐波睡眠が含まれていないため、起床後の睡眠慣性が少ないだけでなく、夜間睡眠にも悪影響をもたらさないというメリットをもつ。しかし、仮眠時間がどれくらいの長さであれば徐波睡眠を含まないかについてはほとんど検討されていない。そこで仮眠の長さと短時間仮眠中の徐波睡眠の関係について検討した。19〜24歳の大学生111名に対して5分から30分の仮眠をとってもらい、その最中に出現する徐波睡眠の量を分析した。その結果、総睡眠時間が15分未満であれば徐波睡眠は出現しなかったが、仮眠時間が15分以上になると徐波睡眠が出現し始め、その出現率は15分〜20分未満で23.1%、20分〜25分未満で22.2%、25分〜30分未満で50.0%、30分〜35分未満で71.4%と、仮眠時間が長くなるにつれて増加した。さらに睡眠段階2開始後の経過時間と徐波睡眠の出現との関係について検討したところ、仮眠中に出現する睡眠段階2が9分以内であれば徐波睡眠が出現せず、9分以上になれば徐波睡眠が出現することがわかった。以上の結果から、短時間仮眠後の徐波睡眠の影響を少なくし、効果的な仮眠をとるためのタイミングは、睡眠段階2が出現して9分後に覚醒させるか、または仮眠の長さを15分以内に保つことが必要であることが明らかとなった。 以上の今年度の成果とともに4年間の研究成果をとりまとめ報告書を作成した。
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