研究概要 |
本研究の目的は、顔の動的特性(時系列に伴う動きの性質)が顔の表情認知に及ぼす効果を明らかにすることである。本研究者はこの問題に対して心理物理学的アプローチ及び眼球運動分析という視点から検討している。これまで本研究によって明らかになった点を概要すると、以下の3点にまとめられる。1.顔の動的特性効果は表情の空間周波数特性に依存すること。2.表情の時系列的変化パターンが文脈判断に影響を与えること。3.動画に対する眼球運動が静止画と異なること。以上の結果から、顔の動的特性効果が低次な空間周波数処理から高次な文脈処理にわたって影響を与えていることが明らかになった。さらに眼球運動分析によって顔の動的特性効果が観察者の認知方略に大きな影響を与えていることを示唆した。特にこの成果は顔表情画像の時間的な変化に伴う認知処理過程を眼球運動分析で示す初めての研究となった。この領域はまだ端緒についたばかりであり、さらなる詳細な検討が進行中である。今後、本研究の進展によって顔画像の時系列的な変化に伴う認知処理過程を分析可能となり、顔認知のダイナミックプロセスを明らかにする手引きが得られるであろう。さらに静止画による研究から構築されてきた顔認知モデルに対して、「動的特性の処理」という重要なプロセスを組み込んだ包括的なモデルを示すことを今後の大きな目的としている。なおこれまで本研究者は以上の研究成果を学会発表5件(内,海外2),及び誌上発表3件(内,海外2)において行っている。
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