研究概要 |
本研究は,表情認知における運動情報がコミュニケーション場面でどのような役割を果たしているのか,多様な視点から考察した。大きく分類すると,表情の空間周波数特性分析及び眼球運動分析に関する検討である。 「信学技報,2005」では,動的な表情の認知メカニズムを注視点分析から検討した.眼球運動測定から得られたデータを時系列的に分析することによって,顔の運動情報が注視点の移動量を抑制していることが示唆された。 「COSMETOLOGY,2005」では,band-pass filterを通した顔動画像を用い,運動情報の効果を表情間で比較した.その結果,表情認知における運動情報の効果は表情特有の空間周波数帯域に基づいていることが明らかになった。 一連の研究から,人間は表情の動きを一過性的な手掛かりとして用い,認知する表情によってその手掛かりを変容させている可能性があることが示唆された。この領域はまだ端緒についたばかりであり,さらなる検討が進行中である。今後,顔認知における時間特性手がかりを詳細に検討し,眼球運動データとの関連を分析していく予定である。なおこれまで本研究者は2005年度において,学会発表5件(国内3,海外2),及び誌上発表4件(国内2,海外2)を行っている。
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