研究概要 |
本年度は実験のセットアップを行い,サルの訓練を開始した。ここではサルにおいて情動・動機づけが意思決定,判断に重要な役割を果たすような課題を考案した。課題は「どれかが正解」というのではなく,ある選択をすれば好みの報酬をもらえる可能性があるがその確率は低い,それに対して別の選択をすればあまり好みではない報酬しかもらえないがその確率は高い,というような条件でサルにどちらがいいか意思決定を求めるものである。サルの空腹度,喉の渇きなどの動因を操作したり,ある食物だけを十分に食べさせて,その食物に対する選択的満腹を起こしたりした上で,報酬の好ましさ,大きさやそれらに伴う確率を種々変化させながら,サルの反応がどのように変化するのかについて調べ,情動・動機づけ要因が意思決定をどのように規定するのかについての行動的データを集めるためのものである。具体的には次のように操作するようなセットアップを行った。(1)確率変数の操作:確率を25%対75%,10%対90%,あるいは0%対50%のように変化させ,サルの反応の変化を見る。(2)報酬の大きさ,好ましさの操作:同じ確率に保ちながら,それぞれの確率で得られる報酬の大きさ,好ましさを変化させ,サルの反応の変化を見る。(3)動困要因の操作:サルの絶食時間を変化させたり,特定の餌のみを十分に与えるという「選択的満腹」を導入したりした後のサルの反応の変化を見る。また,液体報酬と餌報酬という違った種類の報酬間では,同じ種類間でのものと比べてのサルの選択反応がどのように変わるのかも調べる。 現在,サルの1匹の訓練はほぼ終わり,2匹目の訓練を行うとともに,1匹目のサルからニューロン活動の記録を行う実験のためのプログラミングをほぼ終わっている。
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