研究課題
高等教育のマス型からユニバーサル・アクセス型への移行は、個人については高等教育への再帰的な入学と機関間の流動性の拡大を意味するとともに、高等教育機関には個人の断続的な学習行動(編入学、転学、再入学、留学等)を許容する柔軟な制度が求められる。本研究は、こうした非伝統的な学習行動により教育課程が断片化して履修される場合に、学士課程としての体系性・一貫性を保持し、修了資格である学士学位の質を保証する方途について比較検討することを目的としている。本年度は前年度と同様に各種関係資料の収集とともに以下の調査を行なった。1.アメリカの全米アドミッション・オフィサー協会(AACRAO)、マサチューセッツ州高等教育局、世界教育サービス(WES)において、州内、州間、および国外からの学生移動に伴い、高等教育機関間で多様な学習履歴の認定と互換を可能にする枠組みについて聞き取りと意見交換を行なった。2.イギリス高等教育品質保証機構(QAA)、オランダの高等教育国際協力機関(Nuffic)、ドイツのバイエルン州学術研究文化省の専門家から欧州各国における学位構造の改革(バチェラー、マスター、ドクターの3段階制の導入)と高等教育機関間での学位・資格、学習履歴の相互認定について聞き取りを行ない、それを支えるシステムを調査するとともに、日欧の相違について討論を行なった。3.全国の4年制大学・学部を対象に国内アンケート調査を実施した。前年度のヒアリング調査と欧米調査から得られた知見をふまえて、国内高等教育政策との関係から重要と考えられる項目を選択し調査票を作成した。主な質問項目は、学生数、編入学者数、留学生数など学生の移動に関わる基本的なデータ、教育課程の科目構成と卒業要件、単位認定と単位互換、編入学者への支援措置、である。大学・学部の担当者から回答・返送されたデータは目下整理中であり、全国的な傾向と問題点を明らかにするため来年度に詳細な分析を行なう予定である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
比較教育学研究 第32号
ページ: 125-136
大学評価・学位研究 第4号(印刷中)
教育制度学研究 第12号
ページ: 111-114