研究分担者 |
塩谷 隆 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (90235507)
井関 裕靖 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (90244409)
尾畑 伸明 東北大学, 大学院情報科学研究科, 教授 (10169360)
納谷 信 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 教授 (70222180)
砂田 利一 明治大学, 理工学部, 教授 (20022741)
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研究概要 |
結晶格子とは,結晶の原子配列をモデルとした周期的離散図形である。正方格子,三角格子,六角格子など,数理物理にでてくる重要な例は,2次元的な広がりを持ち,自然界の結晶は3次元の空間に周期的に配列されているが,我々は,2次元,3次元とは限らず高次元にひろがる周期的配置も考える.結晶格子を抽象的な無限グラフと考え,それを目に見えるようにユークリッド空間に描くことをグラフの「実現」と呼ぶ. 結晶格子上のランダム・ウォークの長時間挙動,特に大偏差原理が成立することを証明した.さらに,大偏差の減衰スピードを表すレート関数の定義域と,結晶格子の無限遠での漸近接空間の距離球の関係を調べる事で,後者を具体的に,結晶格子の幾何データから求めることに成功した. 周期的磁場のもとに置かれた結晶格子上の電子の挙動を表すハミルトニアン「磁場付き推移作用素」を,磁場付きシュレジンガー作用素の離散化作用素として定義したい.結晶格子がユークリッド空間に実現されており,ユークリッド空間の周期的磁場が自然に定義されている場合は自明であるが,抽象的な結晶格子に対して,磁場を定義すること非自明である.ここでは,磁場の影響を加味した平行移動を持つ非可換空間を定義し,非可換空間のラプラシアンとして,磁場付き推移作用素を定義する.非可換空間は,磁場と空間を一体化した代数的に定義された空間である.磁場付き推移作用素のスペクトルと磁場の影響に見られる自己相似性,対称性などを,非可換空間のもつ自己相似性,対称性の帰結として理解する枠組みを考察した.
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