研究概要 |
本研究課題の目的は,大域的特異点論の種々の重要な未解決問題を,ホモトピー論的観点から,より大きな枠組みの中で解決してゆくことである.そのため,今年度は以下の3つのことを重点的に研究する計画であった. (ア)ホモトピーによる特異点消去のための高次の障害類の定式化と,その具体的計算. (イ)特異ファイバーの普遍空間の構成と特異写像のボルディズム群の決定. (ウ)多様体の可微分構造と写像の特異点の関係. 上記(ア)については,佐伯と岩瀬が研究を行い,写像に現れる特異点が,多様体の大域的なホモトピー不変量によって制約を受け,特に球面的錘長がモース関数の臨界値の個数と大きく関係する事実を発見した.これを関数のみならず,一般の写像の場合に定式化するのは今後の課題である. 上記(イ)については,佐伯が特異ファイバーの研究を行い,余次元が-1の場合に,向き付け可能な特異ファイバーを分類することに成功した.さらにこれを用いて,4次元多様体の符号数定理も発見した.今後はこうした分類結果を踏まえて,普遍空間を実際に構成してゆくこととなる. 上記(ウ)については,佐伯と佐久間が共同してこれまでの結果を整理するにとどまった.来年度以降はこうした結果を踏まえて,多様体の可微分構造に関わる不変量の,特異点論的構築の研究を進めてゆきたい. さらに佐伯は,正則ファイバーとして球面のみを持つ写像や関数を許容する多様体の大域的性質に関する新しい結果を多数得た.また大本はトム多項式の理論をさらに精密化して,群作用がある場合にも意味のあるものを構成した.また高山は円周上の点の配置空間と曲面の写像類群の研究を行い,その特異点論との関係についても研究した.
|