研究概要 |
多様体間の可微分写像やその特異点についての研究は,WhitneyやThomに始まりその後大きな発展を遂げた.特に局所的性質が多く研究され,現在では多くの理論・道具が確立されている.しかし,多様体の本質的構造に関わる大域的性質(写像全体としての性質)の研究は,重要であるにもかかわらずあまりなされてこなかった.そこで本研究では,大域的特異点論の種々の重要な未解決問題を,ホモトピー論的観点から,より大きな枠組みの中で解決してゆくことを目的とした. 本年度は,以下の項目について研究を進めてゆき,後に述べるような結果を得た. (ア)高次の障害類(イ)特異ファイバーの普遍空間(ウ)多様体の可微分構造と写像の特異点の関係 (ア)については,球面をファイバーとして持つ可微分写像についての研究を佐伯と岩瀬が行い,そうした写像を許容する多様体が満たすべきホモトピー論的性質をいくつか得た.こうした性質は,ある種の可微分写像を許容するための高次の障害類と結びついていることが明らかにされた.(イ)については,曲面上の関数に関する特異ファイバーの普遍複体を考察することにより,特異ファイバーの理論から曲面束の特性類が構成できることを佐伯が示した.さらにこうした理論と普遍空間のコホモロジー群との関係についていくつかの結果を佐伯と大本が得た.曲面の写像類群との関係については今後佐伯と高山がさらに研究を行ってゆく計画である.(ウ)については可微分写像の特異点と可微分構造の関係についてのこれまでの結果を佐伯と佐久間が整理するとともに,定値折り目特異点の消去が,ある場合には可微分構造とは無関係に可能であることを佐伯が示した.
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