研究分担者 |
梶原 健司 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (40268115)
神本 丈 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (90301374)
津田 照久 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教 (00452730)
齋藤 政彦 神戸大学, 理学部, 教授 (80183044)
稲場 道明 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80359934)
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研究概要 |
今年度は,本研究課題の最終年度にあたったので,これまでに構築してきたパンルヴェ方程式に対する代数幾何学的および力学系理論的な基盤整備に基づき大域的な解析を実行した。 まず,パンルヴェ方程式の代数幾何学・モデュライ理論,リーマン・ヒルベルト対応、複素3次曲面上の力学系,クライン特異点の最小特異点解消,代数的微分方程式に対する冪幾何の方法,非線形確定特異性の理論等を総動員することにより,パンルヴェ第VI方程式の固定特異点のまわりでの有限多価解が代数的分岐解であることを証明した。併せて固定特異点のまわりでの有限多価解をベックルント変換を法として分類した。更にこれらの結果の応用として,すべての有限多価解が代数関数解であることを証明した。この結果は,この分野における懸案の未解決問題である代数関数解の完全分類に向けての重要なステップとして意味を持つものである。 また,パンルヴェ方程式の周期解の個数を計算するために,より一般的に,代数曲面上の面積保存力学系に対する不動点理論を構築した。これは,整数論に起源を持つ斎藤秀司の不動点公式の双有理写像への一般化と,周期曲線を許す双有理写像に対するシュブ・サリバン理論(局所指数の安定性理論)の展開からなる。曲面上の面積保存系に対しては古典的なアティヤ・ボット型不動点公式は適用できないという難点を克服するために,力学系の分野からは意外と思われる斎藤秀司の理論の適用可能性を見出したことと,最近の代数曲面上の双有理写像の力学系の進展を有効に取り入れて周期曲線が存在するより難しい状況下に指数の安定性理論を構築したことがこの成果の特徴である。この結果を応用することにより,パンルヴェ方程式のパラメータがアフィン・ワイル群の壁に乗っている場合,即ち従来の設定よりずっと困難な状況下で周期解の個数を具体的に計算する手段を確立した。
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