研究概要 |
本年度の研究成果は、以下の3点に集約される。 (1)光電子増倍管(PMT)アセンブリの大量生産を開始 (2)プロトタイプ偏光計の製作と動作実証 (3)気球搭載検出器のモンテカルロ・シミュレータの開発 以下では、順を追って説明する。昨年度までに試作したPMTアセンブリはノイズレベルが目標値より高く、至急に原因の特定を行った。アセンブリ内部のグラウンドと高圧電源に問題があることが判明し、改良をほどこすことで、リップルノイズを1/5まで低減させることに成功した。現在、予定通りのスケジュールで大量生産を始めており、3月末までに54本すべてのアセンブリが納品される(1)。これと並行して、PoGO検出器の「完全な」センサーユニットの製作をスタンフォード大学と共同で進め、センサーを支えるサポートジグの製作も行った。昨年12月には7ユニットからなるプロトモデル偏光計を製作し、高エネルギー研究所の放射光施設において25,30,50,70キロ電子ボルトの4つのエネルギーバンドで検出感度と効率を詳細に調べた。昨年度の簡略化した実験と異なり、本年度はあらゆる箇所が気球フライト品と同じ構成になっており、測定結果にも大幅な改善が見られた。偏光計の性能が最大限に得られていることを確認するため、Geant4を用いた電磁モンテカルロ・シミュレータを新たに開発し、実験データと定量的な比較を行った。その結果、10%以下の精度で実験とシミュレーションは正確に一致することが確認された(2)。最後に、上記のシミュレーションをさらに拡張し、気球搭載モデルとまったく同じ217ユニットからなるモンテカルロ・シミュレータの開発を行った。シミュレータでは、検出器の構成はもちろん、機上で問題となる様々なバックグラウンド(宇宙X線背景放射・大気散乱ガンマ線など)を正しく考慮し、様々な天体を6時間観測した場合に期待される検出の有意度・スペクトル・光度曲線などを計算した。その結果、現状のまま製作を進めていけばカニ星雲(パルサー)、ブラックホール天体、活動銀河核のフレアなど、10天体以上に対して有意に(5σ以上で)偏光を検出できることが確かめられた(3)。
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