研究概要 |
宇宙塵の結晶化を熱史の「温度計」として用いるための実験的・理論的方法を確立し,星間分子雲から惑星系形成に至る熱史の解明する.特に以下の研究を行なう:1)制御した条件下での生成したダストの結晶構造と赤外スペクトルの相関関係の確立.2)結晶化過程の鍵となる物性値(e.g.結晶化の活性化エネルギー,原子拡散係数)の測定とそのデータベース化.3)アモルファス物質内における結晶核形成と結晶成長の素過程の明確化.4)結晶化条件の定式化.5)観測との比較. 1)についてはほぼ完成した.3),4),5)については,理論的研究においては,昨年度,短報を出版した非熱的結晶化についての研究をさらに追求し完成させた.上記の理論の検証実験面を立命館大学のグループで行った.メタン雰囲気中でアモルファス・シリケート表面にアモルファス・カーボンを蒸着させた粒子を大気にさらすと,アモルファス・カーボンのグラファイト化で発生するエネルギーによってアモルファス・シリケートの表面付近が常温で結晶化することを見出し,理論的予想を裏付けた.以上の成果は専門誌に投稿中である. 2)については東北大グループの浮遊法によるシリケートメルト粒子の結晶化実験を理論的に解析し,結晶-メルト界面エネルギー,結晶分子の拡散の活性化エネルギーを決定する方法を導いた.この方法を東北大グループの実験に応用し,フォーステライトの界面エネルギー,結晶分子の拡散の活性化エネルギーを決定した.この結果も現在,専門誌に投稿中である. 以上の結果は,原始星から主系列に至る星の周りのダスト円盤の赤外線観測からその環境の温度履歴を解明する基礎として応用することができる.
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