研究課題
基盤研究(B)
ブラックホール天体からの放射は激しい時間変動を示す。本研究課題は連星系ブラックホールからの可視光を0.1秒以下の時間分解能で観測し、その時間変動の起源を明らかにしようとするものである。3年間で高速測光システムの組み立て、飛騨天文台におけるテスト観測、東広島天文台における本観測、短時間変動に関わるいくつかの理論的研究を並行して行い、以下の結果を得た。(1)高速測光システムの構築と観測浜松ホトニクスと協議し仕様を決定して、e2v社のCCD87というチップを使用した33枚/秒の画像の撮れる高速CCDカメラ及びデータストレージシステムを開発した。このCCDカメラを東広島天文台の1.5m「かなた望遠鏡」に取り付け、ブラックホール天体(はくちょう座X-1)を0.1秒以下の高速測光観測を行い、新しいタイプのフレアを発見した。(2)磁気流体降着流・噴出流からの可視光放射の計算大局的3次元磁気流体コードを使い、磁場を帯びた降着流から噴出する磁気タワージェットの長時間計算を行い、その放射スペクトルを計算した。その結果、ブラックホール近傍(10倍のシュバルツシルド半径)以内の領域から、強い可視光がうみだされ、しかもそれは短時間変動を示すことがわかった。(3)ブラックホールからの放射ゆらぎのモデルの提唱非線形ダイナミクスの分野で生み出された自己組織化臨界の概念をもとに、ブラックホールからの放射ゆらぎのモデルを磁場の誘導方程式をもとにつくりあげ、計算を進めたところ、観測の光度曲線の形、パワースペクトルの形、対数正規分布のフラックス分布の全てを同時に再現することに成功した。これはまさに、磁気リコネクションに伴うフレアがゆらぎの原因であることを強く示す結果である。
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