研究概要 |
本補助金の交付によって昨年度はドイツ・重イオン科学研究所の重イオンシンクロトロンと核破砕片分離装置を使い陽子過剰な質量数72〜80のクリプトン同位体につき反応断面積の測定をトランスミッション法により研究分担者・研究協力者と共に遂行した。 今年度,質量数72〜80のクリプトン同位体につき反応断面積の解析結果を確定させグラウバー理論の光学極限近似を適用して核半径を導出した。核半径は質量数A=80〜76〜72の減少に伴い通常の安定核であれば,Koxの半経験式からも予想されるようにA1/3に従って減少するのに反して誤差を考慮しても増加の傾向を示した。これは近傍での(クリプトンKr;ブロムBr;セレンSe;ヒ素As;ゲルマニウムGe;ガリウムGa)といった不安定核の核半径の振舞いと矛盾しないことが分かった。現在ドイツ人研究協力者と変形の効果を議論しつつ投稿論文を準備中である。また本研究の結果は春季物理学会(愛媛大学)に於いて実験にも参加した修士2年の大学院生が報告する。 また本研究では同時にクリプトン-80を入射ビームとした場合の1GeV領域での入射核破砕反応で生成される種々の同位体の生成断面積も得ている。この断面積の傾向は現象論的予言式;EPAX2の予言とは一致するものの陽子ドリップライン近傍で実験値を再現しなくなる事及び実験値はAbrasion-Ablation模型の予言では再現されることが分かった。更に1陽子ピックアップ過程の断面積をも得ることができた。こちらはカスケード模型の計算を現在遂行中で,これらの結果も春季物理学会で鈴木が報告し,また論文として投稿する。
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