研究概要 |
本研究は,この種の研究施設としては世界最高高度(5,200m)に位置する南米ボリビア・チャカルタヤ山宇宙線観測所において,10^<16>eV以上の宇宙線空気シャワーの縦方向発達曲線を測定し,この結果とシミュレーション計算結果とを比較することにより,一次宇宙線の平均化学組成を10%の精度で決定すると同時に,この結果を用いてエネルギースペクトラムを決定し,その起源を解明することを目的とする. 各年度に提出した交付申請書に記した実施計画は,ほぼ順調に遂行できた.ただ,新空気シャワーアレイの完成は,科学研究費申請時の予定より半年ほど遅れた.この最大の原因は,経年劣化した既存のケーブルを多く用いたことにより外来ノイズが信号系統に混入し,その軽減に多くの時間を割かざるを得なかったためである.何とか空気シャワー観測が実施できる程度までノイズを減少できたが,最終的には新ケーブルとの交換が必要であるが,経費の都合上,徐々に変更していく予定である. 本研究により完成させた新空気シャワーアレイを用い,今後,空気シャワー観測を継続し,充分な統計量が得られた後,等頻度法により平均縦方向発達曲線を導出し,一次宇宙線化学組成に関する最終結果を得る.この方法は,装置にかける経費が少ない割には確実に結果が得られる点で非常に優れているものである.また,この結果得られる化学組成に関しては,一次宇宙線が陽子,中重核,鉄核の3つのグループの混合であると仮定した場合の各混合比が得られることになる.これによってKnee領域以上での一次宇宙線化学組成のエネルギーに対する変化の様子から,銀河系内における宇宙線起源に関して多くの情報が得られると考える.
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