研究概要 |
1.物理解析 KEKB加速器は順調にルミノシティの記録を更新し、つい最近1.6×10^<34>cm^<-2>s^<-1>というマイルストーン的世界記録を達成した。これに呼応して、物理解析の方も順調に進んでいる。本研究グループが主体的に取り組んでいる解析についての現状と結果を記す。 (1)B中間子のπ^+π^-崩壊 この崩壊モードは、CP非保存パラメータの一つφ_2の測定に重要であるが、終状態がありふれたπ中間子であることからコンティニューム(他のクォーク対生成過程)のバックグランドの寄与が大きく、実験的に困難がある。カットを最適化し、PDF(probability Density Function)でフィットすることによって評価した結果、大きなCP非保存と、直接的CP非保存の初めての証拠を得た。また、アイソスピンの関係式から、φ_2の許容範囲について制限をつけることができた。φ_2の値は、現在の統計では小林・益川機構で説明がつく範囲にある。 (2)B中間子のA_2π崩壊 この崩壊モードもφ_2の測定に重要でありバックグランドの寄与も同様に大きい。現在、カットの最適化が終わり、分岐比の測定結果が出たところである。今後は、時間フイットを行ってφ_2を測定したい。 (3)FCNC崩壊 本研究グループは上記以外のFCNC崩壊モードの解析にはまだ直接手がついていない。しかし、その解析に不可欠なツールの開発に寄与している。たとえば、コンティニュームバックグランド除去の最適化、時間依存フィットの改良など。また、下記のように、ハード面でも寄与している。 2.シリコンバーテックス検出器の性能向上,アップグレード機の開発 2003年夏にアップグレードされたシリコンバーテックス検出器の性能の向上に大きく寄与した。さらに,ルミノシティ向上に伴うバックグランド増加による効果を調べ,占有率の増加とともに検出効率が大きく劣化することを見つけた。その原因として,余計なhitによりclusterが大きくなり,cluster findingのcutを超えることがわかり,cutを緩くすることで,その他の性能を劣化させずに検出効率がかなり改善されると結論した。さらに抜本的な改善策として,読み出し回路にピーキングタイムを1/10ほどに短くできるAPV25を用いることにし,その性能等を調べた。
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