オーストラリアに設置した空気チェレンコフ光望遠鏡アレイCANGAROO-IIIを用いて、天体からのTeVガンマ線観測を遂行している。今年度は、TeVガンマ線領域の基準光源である、かに星雲の観測データを用いて、解析手法、特に、ガンマ線とバックグランドを区別する手法について、最尤法に加えて、Fisher Discriminant法を導入し、有用な手法であることが分かり、今後の解析に適用することになった。さらに、銀河系内にある、Velaパルサー星雲を観測し、Velaパルサーの位置から、有意なガンマ線を検出できなかったが、Velaパルサー星雲から、広がったTeVガンマ線を検出した。これは、先にHESSグループ(欧)が発表した結果と一致しており、パルサー星雲系の高エネルギー粒子加速を解明する上で重要な結果を得た。この他にも、非熱的X線が検出されている、超新星残骸RXJ0852.0-4622の観測データを解析し、広がったTeVガンマ線を検出した。現在、ガンマ線強度分布およびスペクトルの詳細な解析を進めており、得られた結果から、超新星残骸のTeVガンマ線放射機構ならびに宇宙線起源について考察する。これら天体観測以外にも、天体検出感度を改善すべく、データ収集システムの改良について検討した。特に、主焦点にある光電子増倍管からのチェレンコフ波形を、500MHzでサンプリングするためのFADC回路を、望遠鏡の一部に試験導入し、従来の電荷積分型方式に比べて、バックグランドである夜光を除去することができ、S/N比を改善できることが分かった。全ての光電子増倍管に導入できるように、FADC回路の高密度化の検討を行っている。
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