オーストラリアに設置した空気チェレンコフ光望遠鏡アレイCANGAROO-IIIを用いて、天体からのTeVガンマ線観測を遂行している。(1)超新星残骸RXJ0852.0-4622から、広がったTeVガンマ線を検出し、多波長の観測結果から放射機構を考察した結果、(1a)TeVガンマ線は、数十TeVまで加速された電子からの逆コンプトン散乱であり、一方、X線は、数μGの磁場中の電子シンクロトロン放射で説明できるが、電子の総エネルギー量が、超新星爆発のエネルギーから考えて少ないこと、(1b)数十TeV以上まで加速された陽子でも説明できるが、陽子と衝突する星間物質の密度が未知であり、陽子起源を棄却できないこと、が分かった。(2)SN1987Aは、超新星爆発の衝撃波が星周物質と衝突し、荷電粒子の加速が期待され、観測した結果、TeVガンマ線は検出されなかった。今後、観測を続けていくことで、SN1987A中における衝撃波伝播および放射機構について強い制限を与えることができる。(3)パルサーPSRB1509-58を含むパルサー星雲である超新星残骸MSH15-52から広がったTeVガンマ線を検出した。電波からTeVガンマ線までの観測結果から、電波から硬X線領域までは、数十μGの磁場中の電子シンクロトロン放射、ガンマ線は数百TeVまで加速された電子の逆コンプトン放射で説明でき、電子の総エネルギーは、パルサーの回転エネルギーの損失量の数から数十%に相当することが分かった。これら天体観測と並行して、天体検出感度を改善すべく、データ収集システムの改良に向けた基礎開発を行った。特に、主焦点にある光電子増倍管からのチェレンコフ光波形をGHzでサンプリングし、一定時間コンデンサに記録した後に、読出しを行う小型省電力のASIC回路を製作し、その性能を調べ、望遠鏡搭載に向けた設計を行った。
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