銀河系内宇宙線の発生源と粒子加速機構を解明するために、オーストラリアに設置した大気チェレンコフ望遠鏡CANGAROO-IIIを用いて、超新星残骸からのTeVガンマ線を観測し、エネルギースペクトルと空間強度分布から、以下の結果が得られた。1.超新星残骸RXJ0852.0-4622から広がったTeVガンマ線を検出し、電波やX線の観測結果と合わせると、(1)TeVガンマ線は、数十TeVまで加速された電子の逆コンプトン散乱、X線は電子シンクロトロン放射で説明できるが、電子の総エネルギーが、超新星爆発のエネルギーから考えて少ないこと、(2)数十TeV以上まで加速された陽子でも説明できる。2.パルサーPSR B1509-58のパルサー星雲を含む超新星残骸MSH15-52から広がったTeVガンマ線を検出し、(1)ガンマ線空間分布がシェル型ではないこと、さらにガンマ線強度を説明するための陽子の総エネルギーがパルサーからのエネルギー供給量では足りないことから、陽子起源は棄却される。(2)電波からTeVガンマ線までの観測結果から、電波からX線領域までは、電子シンクロトロン放射、ガンマ線は数百TeVまで加速された電子の逆コンプトン放射で説明でき、電子の総エネルギーは、パルサーの回転エネルギーの損失量の数から数十%に相当する。3.未同定天体HESS J1804-216から広がったTeVガンマ線を検出し、超新星残骸の場合、電子・陽子起源ともに多波長スペクトルを説明できること。これらの結果から、超新星残骸では、陽子または電子が高エネルギーまで加速されていることが分かり、宇宙線の起源解明に近づいた。これら天体観測と並行し天体検出感度を改善すべく、光電子増倍管からのチェレンコフ光波形をGHzでサンプリングするFADCの試験導入や小型省電力ASIC回路の開発を行った。
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