研究課題
エネルギー分解能2eV,16×16ピクセルのTES(Transition Edge Sensor)型カロリメータシステムの実現へ向けて、(1)カロリメータ素子の性能評価と製作へのフィードバック、(2)256ピクセル信号読み出し部の動作検証、(3)小型衛星用の断熱消磁冷凍機とのインターフェイス検討、の3段階を順次すすめた。これらの実験結果や設計検討の結果に関しては、宇宙の中高温銀河間物質(WHIM=Warm Hot Intergalactic Medium)を酸素の輝線(OVII, OVIII)を用いてマッピングする小型衛星ミッションであるDIOS (Diffuse Intergalactic Oxygen Surveyor)計画の提案書としてまとめられたほか、WHIM国際ワークショップにおいて発表を行った。素子の製作に関しては、256ピクセル素子の製作と問題点について低温検出器の国際学会(LTD11)で発表を行った。また、検出器の性能を向上させるために都大学で成膜した超伝導薄膜を用いてinhouseでの素子製作を開始し、最初のロツトガ完成してX線検出に成功した。これにより、開発サイクルの短縮がきたいされる。256ピクセルの信号の読み出し部については、TESカロリメータ用に最適化をした8入力SQUID(超伝導量子干渉素子)を製作、動作確認をしたほか、室温部の超低雑音アンプの開発も進行中である。また、TESカロリメータのプラズマ診断に対する性能を実際に検証するために、新たに産業技術総合研究所の核融合プラズマ研究グループと共同研究を開始し、逆磁場ピンチプラズマ装置で生成される〜600eV程度の重水素プラズマからのX線スペクトルを測定する実験を行った。そのために、小型の断熱消磁冷凍機にTESカロリメータを組み込んで動作させる環境を整備し、さらに軟X線に対する感度を上げるために極薄いアルミ蒸着フィルム(0.5μm×5枚)を使用するなどの工夫を行った。実験の結果、プラズマ装置からのX線信号の検出に成功し、そのスペクトルを解析することでプラズマの温度分布や不純物(Fe,Oなど)の量について調べた。この結果についてはLTD11において発表を行い、論文を投稿、受理された。また、スズ箔を接着してガンマ線領域にも感度を持たせた素子の製作も行い、60keVにおいて40eVという世界最高レベルの分解能を実現、さらに高エネルギー研究所に持ち込んで塩の粉末結晶の回折光のスペクトルの取得に成功した。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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