研究課題/領域番号 |
16340078
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
南方 久和 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 教授 (00112475)
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研究分担者 |
安田 修 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 助教授 (50183116)
北澤 敬章 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 助手 (20271158)
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40185773)
末包 文彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10196678)
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キーワード | ニュートリノ振動 / フレーバー混合 / ニュートリノ質量の階層性 / CP非保存 / 長基線ニュートリノ実験 / 原子炉ニュートリノ実験 / 超新星ニュートリノ / CPT対称性 |
研究概要 |
今年度の研究は以下の3点に重点をおいて行われた。 (1)T2KK(東海村-神岡ニュートリノ実験の新しい方式の提唱):東海村から神岡にビームを送るT2K実験の第二期計画に焦点を合せて、すでに現デザインでも2個のタンクからなるハイパーカミオカンデ検出器の一つを韓国内のしかるべき場所に設置することによって、様々の物理学上のメリットがあることを明らかにした。韓国内のJ-PARCビームの延長線上に検出器をおいた場合、東海村からの距離は約1000キロメートルとなり、近似的に第二振動極大の距離に一致する。このため出現モードの電子ニュートリノエネルギー分布が神岡とコリアで大きく異なり、しかもこの違いがCP位相や物質効果によって敏感に変化することが分った。このためCP非保存検出能力の穏やかな改善とともに、元のデザインにはないニュートリノの質量パターンに関する分解能力が付加されることが分った。 特筆すべきこととして、この研究は理論家(代表者南方・布川)と神岡グループの実験家(梶田・石塚)の共同研究として行われたことがあげられる。さらに、このT2KK提案が世界的に反響を呼んだため、韓国ソウルのコリア高等研究所(KIAS)においてこの神岡・コリア2検出器系計画の検討に特化されたワークショップが17年11月18・19日の両日開催された。欧州・米国からも参加者があり、このアイデアの有効性を確認するとともに、世界に向かって意見表明のための声明を発表した。18年の夏には第2回ワークショップが開かれる予定である。 (2)レプトンフレーバー混合の23角の決定方法:23角が最大でない場合に、この決定にまつわる二重解の存在が知られている。この二重縮退を解く方法として加速器実験のミューニュートリノ消失・電子ニュートリノ出現モードと原子炉ニュートリノ実験による13角測定を組み合わせる方法が以前(代表者・分担者の一部によって)提案されている。今年度の研究では、T2K実験の第二期計画を仮定し、またより進んだ原子炉実験を想定して、この方法による二重縮退分解能力の限界を定量的に調べた。加速器・原子炉両実験に対して極限的な感度を仮定したにもかかわらず、13角の小さい領域ではこの方法による縮退分解能力に大きな限界があることが分った。 (3)KASKA実験の感度評価:我が国の柏崎・刈羽原発を用いる13角測定のための原子炉ニュートリノ実験(KASKA)においては原子炉が数キロメートルにわたって1次元的に拡がって設置されているために、2個の近距離検出器と1個の遠距離検出器を用いる。このような空間的分布をもつ多原子炉・多検出器の場合の13角測定感度評価の一般的取り扱いは簡単ではない。この感度評価のための統計解析方法に関する体系的な理論的研究を行った。問題の複雑さにもかかわらず、測定感度の解析的な近似公式を導出することに成功した。
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