研究概要 |
表題の通り「π中間子原子高精度分光」を達成し、より精密な強い相互作用の情報を得るための手法として、通常運動学の手法(d, 3^He)反応を改良する事に着手した。様々な検討の結果、現在理化学研究所に建設中のRIビームファクトリー(RIBF)がこの目的に沿った施設である事が分かった。RIBFの主目的は、名前の示す通りRIビームの生成を目指したものであるから、そのままではπ中間子原子の高精度分光には適さない。RIBFを「π中間子原子工場」として使うための改良は容易ではないが、分散整合光学系を構築することによって、当初の目標であった分解能200keVを達成する事が出来、これにより、π中間子と原子核の局所相互作用を、深い束縛状態の実験データだけを用いて決定出来る事が分かった。このような検討に基づいて錫122原子核を標的として用いる実験のための検出器、標的等を整備した。また、準備状況に基づき実験を申請したところ、本研究はRIBFの課題審査委員会(PAC)を通して、推進すべき課題として国際的な評価を得ることができた。 但し、実験開始までに必要な条件として加速器のビーム強度が設計通り重陽子に対して毎秒10^<12>を達成することが必要である。RIBFは現在まで設計に比べて二桁落ち程度のビーム強度しか達成出来ておらず、今日現在実験を開始する事は困難な状況にあるが、加速器のコミッショニング完了に続いて本実験を行う。
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