研究概要 |
初年度は、既設の光検出器を装備した透過型電子顕微鏡を主要装置として用い、以下の試料に対して波長や偏光方向を選択したイメージング、および位置指定した発光スペクトルの測定から表面プラズモンの性質を調べた。 (1)2次元配列したナノホールをもつ金属薄膜 (2)ストライプ状の格子表面、および微粒子の1次元および2次元に配列した表面 (1)では、Ebbesen氏から試料を提供してもらい、ナノホールのエッジに局在した表面プラズモンモードの存在を証明した[Optics Communications 239,61(2004)]。試料は、膜厚270nm、ホール径240nm、間隔600nmのナノホール配列をもつもので、波長700nmの光に対して異常透過が起こる。p偏光とs偏光方向でいろいろな波長の光でフォトンマップを測定した。ナノホールエッジに局在したコントラストは局在表面プラズモン(LSP)によるもので、それとは別に波長700nmのマップに対角線方向に走る線状のコントラストを観測し、これは表面を伝播する表面プラズモンポラリトン(SPP)が定在波を形成していると考えた。このモードがホールに局在したLSPモードと結合して異常透過の現象が起こると解釈できる。(2)では、シリコン表面に2次元的に配列させたポリスチレン球状微粒子に銀やアルミニウムを蒸着した表面における表面プラズモンの共鳴モードを調べ、その発光を用いて各モードの発光パターンを観測した。これら共鳴モードの発光は、ブリルアンゾーン境界の波数をもつ定在波のパターンを示すことが見出された。この結果から、共鳴モードの発光エネルギーは、表面プラズモンのフォトニックバンドのバンドギャップにおけるエネルギーに対応すると予想され、全てのモードのバンド構造との対応を調べている。また、既存の装置による実験と並行して、角度分解型光検出装置の開発を行った。この装置を使った実験は来年度行う。
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