トランジスタの微細化は、LSIの機能あたりのコスト低減、低消費電力化、高速化に寄与するため、1970年以来一定のペースで進んできた。しかし、半導体に従来使われている材料を用い続ける限り、近い将来、LSIの性能向上は大きな壁にぶつかる。その1つが、さらに微細化が進むと、MOSトランジスタの絶縁膜の膜厚は1nm以下になり、トンネル効果で電流が通り抜け、消費電力の増大に結びつくことである。この問題を解決するために、物理的膜厚は厚くできる新材料、高誘電率(High-k)材料を採用する必要がある。その中でHfO_2は有力な候補であるが、熱処理で結晶化しその粒界に漏れ電流が流れるという課題がある。そこで、この結晶化過程をシンクロトロン放射光を利用した表面X線回折法によりその場観察した。研究の結果、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって成膜したHfO_2は、常温常圧で通常観測されるMonoclinic構造のみでなくTetragonal構造もしくはOrthorhombic構造を形成していることがわかった。また、ALD法によって成膜したHfAlOxは、900℃で結晶化しCaF_2型のCubic構造を形成することがわかった。この構造はICDDカードには報告されていない構造であるが、2700K以上で出現する高温相であるとの報告もある。結論として、通常の条件下では、出現しない構造が、極薄膜であることに伴う応力によって出現したといえる。 また、HfO_2膜の及ぼす格子歪の測定を極端に非対称なX線回折法を用いて行い、界面付近で格子が0.1-0.3%程度圧縮され、歪の及ぶ深さが10-20nmであることを定量的に明らかにした。さらにPDA(Post-Deposition Annealing)を施すとその格子歪が変化することもわかった。 次に、より実用材料に近いHfAlox(N)/SiO_2/Si界面について研究を行った。極端に非対称なx線回折法を用いて界面の格子歪の評価を行い、また、X線光電子分光法を用いて、局所的誘電率を求めた。研究の結果、PDAなしの試料は、O_2中の基板温度850℃でのPDAありの試料に比べて圧縮歪が導入されていることが分かった。また各試料について求められた格子歪がAl原子の周囲の局所的誘電率と相関があることもわかった。
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