マイクロマシンやナノマシンの実現は、次世代産業創出のための起爆剤になると考えられている。マイクロマシンのようにサイズが小さくなってくると、表面積の増大によって摩擦力はその重量に比べて相対的に増大する。したがって、たとえマイクロマシンやナノマシンの加工が可能になっても、その物体の可動は困難である。現状では、摩擦力を減らす有効な解決手段が得られていない。このようななか、C_<60>単分子層をグラファイト基板間に挟んだ系が、動摩擦がほぼゼロという実用化にとっては、福音ともなるべき実験結果が我々によって得られた。 従来の我々の研究では、C_<60>分子はグラファイト表面に炭素原子の6員環がABスタッキングを維持するように配置すること、多層カーボンナノチューブ分子も、C_<60>分子と同様にグラファイト表面に炭素原子の6員環がABスタッキングを維持するように3回対称の配置することが知られていた。これらの分子は、グラファイト上で炭素原子の6員環によるナノギアを形成し、特に多層ナノチューブの場合には、このナノギアを形成によって転がりが起こる。したがって、このような転がりや安定な配向において、炭素原子の6員環の噛み合わせ(ナノギア)が重要な役割をしていること、さらにC_<60>単分子層の上にグラファイト基板を載せた場合、グラファイト基板はC_<60>単層膜がグラファイトの上に成長した場合と同様に積み上がることなどの知見が得られていた。本研究計画ではマイクロマシン、ナノマシンの実現に寄与すべく炭素原子の6員環の噛み合わせ(ナノギア)に注目し、C_<60>分子やナノチューブをグラファイト基板で挟んだ場合に発現する超潤滑機構の解明、さらに新たな超潤滑系の構築を目的にするに至った。研究期間内に明らかにすることとして(1)ナノギア、分子ベアリングによる超潤滑機構の解明、(2)超潤滑機構の理論的解明、(3)新たな分子ベアリングの超潤滑系の探索が研究課題としてあげた。その結果、この3つの研究課題は、ほぼ、2年間の研究期間に達せられた。特に、(3)の新たな超潤滑系の発見として、フラーレンをグラファイト内に内包した化合物発見が特記される。この新しい物質は、今後の固体潤滑のあり方を示すべく新規の超潤滑固体潤滑物質として世界的に注目されつつある。
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